焼き鳥と選択

以前住んでいた町に来た。お目当ては焼き鳥。しかしまさかのお休みらしい。

 

さっきまで快晴だった空は一気に曇りだし、喫茶店に入る直前にはポツポツと降り出した。たぶんしばらく一気に降ったら止むだろう。

 

文体が何となく小説臭いのは、今さっきまで久しぶりに読んでいたからだと思う。森絵都の短編集。架空の球を追う。

この近所に住んでいるときは、よくこの店で本を読んでいた。いや実際にはダラダラと携帯電話を弄っている時間の方が長かったかも知れないけど。

 

短編集の中の一つに、昔馴染みの友達と定例の飲み会をする話があった。

女同士でその時々に議論をしたとのこと。様々なテーマにおける二者択一。どちらが幸せか。

 

登場人物と同じ三十代になってみて、確かに色々な二者択一があり、そのどちらも結局幸せの程度は変わらないんじゃないかと思う。

 

若ければ若いほど「正解」を探しがちだけど、それは常に選択を迫られていたからかも知れない。

進学、友情、部活、就職、結婚などなど。

 

そう思うと残された選択はより個人的なものが多い。みんながすること、は少なくとも半数以上はクリアしてきたんじゃないか。

 

限定的な選択肢の中からは一生懸命に悩んで答えを出すけど、自由になってしまうと、何も選ばない生活をしがちなのかもしれない。大人になると新しい趣味さえ始めないように。

 

つまんない大人になったかなと思うけど、今日は自分で昔見つけたお気に入りの焼き鳥屋さんで、長い付き合いの奥さんと、いつものように美味しいであろうせせりを食って帰ろう。

雨が上がったら。もしお休みでなかったら。